猫の歯肉炎のサイン!|愛猫の小さな変化、見逃していませんか?
- 総合診療
突然ですが、愛猫のお口の中をしっかり見たことはありますか?
猫の歯肉炎は、実は比較的よく見られる病気で、初期の段階でははっきりとした症状が出にくいため、気づかないうちに進行してしまうこともあります。
そして、もし歯肉炎が悪化してしまうと、痛みのせいでごはんを食べられなくなってしまうこともあります。
今回は、猫の歯肉炎のサインや治療法について解説します。

■目次
1.愛猫の些細な行動変化に気づいていますか?
2.歯肉炎の原因はひとつじゃない|歯石だけじゃないケースも
3.こんな仕草や行動、実は歯肉炎のサインかも
4.動物病院で行う猫の歯肉炎に関する検査について
5.歯肉炎の治療方法
6.治療後のケア方法|歯肉炎を再発させないためにできること
7.よくある質問
8.まとめ
愛猫の些細な行動変化に気づいていますか?
猫は本来、野生の名残から体調不良や痛みを隠す習性があります。特に、犬と比べても痛みや違和感を行動に表しにくい動物です。
そのため、「なんだか元気がない」「食欲が落ちている」といった変化が見られるころには、病気がすでに進行してしまっている可能性もあります。
毎日の生活の中で、ささいなサインを見逃さず、いつもと違う様子があれば早めに気づいてあげることが大切です。
歯肉炎の原因はひとつじゃない|歯石だけじゃないケースも
猫の歯肉炎は、歯垢や歯石の蓄積が原因となり、悪化してしまうことがあります。
食べかすや細菌の塊である歯垢が歯に付着すると、時間の経過とともに硬い歯石に変化します。
さらに、歯石は新たな歯垢が付着しやすく、そこに細菌が増殖することで、歯肉炎が悪化する悪循環が引き起こされます。

ただし、歯石があるだけで必ず歯肉炎になるわけではありません。
歯と歯ぐきの間にある「歯周ポケット」に細菌や歯垢が入り込み、炎症が引き起こされることで、初めて歯肉炎が発症します。
つまり、歯石はきっかけのひとつであっても、それだけが直接の原因とは限らないのです。
一方で、歯石がほとんど見られないにもかかわらず歯肉炎が生じるケースもあり、そのような場合には、アレルギー反応や免疫の異常、猫カリシウイルスなどのウイルス感染が関与していることもあります。
このようなタイプの歯肉炎は、いくら歯石を取っても根本的な解決にはならないこともあります。
見た目の症状が似ていても、歯石によるものと、アレルギー性・細菌性・ウイルス性などの歯肉炎は原因がまったく異なるため、きちんと見極めることが大切です。
さらに歯肉炎を放置すると、炎症の原因となる細菌が血流に乗って全身に広がり、心臓や腎臓などに悪影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、お口の健康を守ることは全身の健康を守ることにもつながります。
こんな仕草や行動、実は歯肉炎のサインかも

愛猫の普段の仕草や行動の変化が、実は歯肉炎のサインであることも少なくありません。
◆食べ方が変わった
歯肉炎が進行すると、口の痛みから硬いフードを嫌がることがあります。また、片側だけで噛んだり、食べこぼしが増えたりすることもあります。
しかし、痛みを避けるためにフードを丸のみする場合もあるため、「硬いフードを食べているから大丈夫」と安心せずに、食べ方の変化には注意しましょう。
◆よだれを拭う仕草が増えた
猫は、口内炎や歯肉炎など、口の中に痛みや違和感があると、いつものように毛づくろいをしなくなることがあります。しかし、口の不快感からよだれが増えてしまい、前足で頻繁に拭う仕草が見られるようになることもあります。

さらに、前足の毛がよだれで濡れて赤茶色に変色したり、脱毛してしまったりすることもあります
◆遊び方が変わった
おもちゃを口にくわえることを避けたり、遊びに消極的になったりする場合も、口内の痛みが原因かもしれません。
◆口を気にする様子が見られる
歯肉炎があると口の中の違和感から、以下のような仕草を見せることがあります。
・口をくちゃくちゃと動かす
・顎をがくがくさせる
・椅子やカーペットに口を擦り付ける
動物病院で行う猫の歯肉炎に関する検査について
猫の歯肉炎は、早期発見と適切な治療が大切です。
ただし、「歯石があるからスケーリングをすれば良い」という単純な流れではなく、まずは炎症の原因や進行度を正確に見極めることが重要です。
そのため、動物病院では口の中の状態だけでなく、全身の健康状態も含めて、さまざまな検査を行いながら治療方針を検討します。
検査の目的はスケーリングを前提としたものではなく、「何が原因で、どの程度の炎症が起きているのか」を判断するためのものです。
<口腔内の観察>
猫の口腔内を丁寧に観察し、以下のような点を確認します。
・歯石の付着具合
・歯肉の炎症の有無や進行度
・痛みや出血、口臭の程度
これにより、歯石が原因となっているのか、あるいはそれ以外の要因が関係しているのかを見極めていきます。
<ウイルス検査(血液検査)>
猫の歯肉炎の中には猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)などのウイルス疾患が原因となっていることもあります(いわゆる歯肉口内炎など)。
このようなタイプの歯肉炎では、スケーリングだけでは改善が見込めないこともあります。
そのため、まずは血液検査を行ってウイルス感染の有無を調べることが、正しい診断と治療につながります。
<全身状態の確認(血液検査・レントゲン検査)>
歯肉炎の治療には、全身麻酔を必要とする処置が含まれることもあります。
そのため、安全に治療を行うためには、あらかじめ猫の全身状態を把握することが欠かせません。
・血液検査:内臓の機能や健康状態を確認し、麻酔に耐えられるかどうかを判断します。
・レントゲン検査:口腔内の状態だけでなく、歯や顎の骨の健康状態も確認します。
歯肉炎の治療方法

猫の歯肉炎は、その原因や進行度によって治療方法が異なります。
スケーリングだけでなく、投薬治療や食事の見直しなど、状態に応じた対応が必要です。
<スケーリング治療>
歯石の付着や歯肉炎が進行している場合には、スケーリング治療(歯石除去)が必要です。
1.全身麻酔下での施術
スケーリング時には、多少の痛みを伴うことや、鋭利な器具を使用すること、また長時間口を開ける必要があることから、必ず全身麻酔下で行います。
2.歯垢・歯石の除去
超音波スケーラーを使用して、歯に付着した歯垢や歯石をしっかりと取り除きます。
3.歯の表面を研磨
最後に、研磨剤を用いて歯の表面を滑らかに磨くことで、新たな歯石が付きにくくする効果があります。
<投薬治療>
歯肉炎の痛みにより食欲が低下している場合には、以下のような投薬治療を行うことがあります。
・痛み止め(鎮痛剤):口の痛みを和らげ、食事をしやすくする目的で使用します。
・抗生剤(抗生物質):細菌の感染を抑え、炎症を軽減するために使用することがあります。
<食事療法という選択肢>
歯肉炎の原因がアレルギー性の場合、食事内容の見直しによって炎症が落ち着くこともあり、薬に頼らず改善することも可能です。
実際に、特定の原材料を避けた食事や、消化に優しいフードに切り替えることで症状が改善した例もあります。
<必要に応じた抜歯治療>
軽度の歯肉炎であれば、スケーリングのみで治療が可能ですが、以下のような場合には、抜歯が根本的な治療法となります。
・痛みや炎症が強く、歯を残すことでかえって負担になる場合
・歯肉口内炎など、ウイルス感染や免疫の異常が関与している場合
特に重度のケースでは、歯冠部(犬歯)から奥歯までのすべてを抜歯するという選択肢が検討されることもあります。
猫は本来、食べ物を丸呑みする習性があるため、たとえ多くの歯を抜いたとしても、日常生活や食事に大きな支障が出ることはほとんどありません。
無理に歯を残して痛みを我慢させるよりも、しっかり原因を取り除いてあげることが、愛猫にとってのメリットになる場合もあります。
抜歯が必要かどうかは、獣医師と相談しながら判断していきましょう。
治療後のケア方法|歯肉炎を再発させないためにできること
猫の歯肉炎は、治療後も再発を防ぐためのケアがとても大切です。
猫は犬と比べて歯磨きを嫌がりやすいこともあり、口腔ケアが難しいことが多いため、無理なく続けられるケア方法を取り入れて愛猫の健康を守ることが大切です。
◆歯石に配慮したフードを与える
デンタルケア用のフードや、歯石が付きにくい処方食を選ぶことで、食べながら歯垢を落とす効果が期待できます。普段の食事に取り入れるだけなので、特別な手間をかけずに口腔ケアが可能です。
◆ ガーゼで歯を優しく拭う
ガーゼを指に巻き、優しく歯や歯ぐきを拭うことで、歯垢を取り除くことができます。
まずは口周りに触れることから始め、徐々に口の中にも触れる練習をしましょう。

よくある質問
Q.食欲があれば問題ないですか?
A.食欲があっても、必ずしも安心できるわけではありません。
猫は痛みを隠すのが上手ですが、食べ始めても痛みのせいで途中でやめてしまうことがあります。また、口の痛みを避けるためにフードを丸のみして食べることもあります。
そして、食欲が落ちるころには炎症が重度に進行している可能性もあります。
Q.猫の歯肉炎には気づきやすいですか?
A.猫の歯肉炎は、口臭や食べ方の変化といった外から見えるサインで気づけることもあります。
ただし、猫は口に触られるのを嫌がる子も多く、特に奥歯の状態を自宅で確認するのは難しい場合が多いです。
そのため、もし「いつもと違う」と感じることがあれば、予防接種や健康診断の際に、かかりつけの獣医師に口腔内をチェックしてもらうことをおすすめします。
まとめ
猫は痛みを隠すことが上手な動物です。そのため、はっきりとした行動の変化が見られなくても、実は口に痛みを感じていることがあります。
特に、口の中のトラブルを放っておくと、食欲低下や脱水など、重篤な状態に進行する可能性もあります。
もし、愛猫に口臭や食べ方の変化、口を気にする仕草など、気になるサインが見られたときには、どうぞお気軽に当院にご相談ください。
世田谷区上祖師谷の成城通り病院「池田動物病院」












