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犬のリハビリとは?|筋肉・筋膜・骨格から整えるケアの基本と進め方

  • リハビリテーション

犬のリハビリテーションと聞くと、「運動療法のことかな?」「うちの子にはまだ必要ないかも」と感じる飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際には、リハビリは単なる運動や筋トレではなく、科学的根拠に基づいた、身体機能の回復や再発の予防を目的とした、総合的なケア方法なのです。

 

今回は、2部構成でお届けする特集の第1回として、「犬のリハビリテーションとはどういったものか」という基本的な考え方を中心にお伝えします。さらに、筋肉・筋膜、そして骨格への段階的なアプローチについても、わかりやすくご紹介していきます。

 

愛犬が手術やケガからの回復の途中にある場合はもちろん、「最近ちょっと動きが鈍くなってきた気がする」「散歩中につまずくことが増えたかも」といった変化を感じている飼い主様にも、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。

■目次
1.リハビリテーションの目的とその大切さ
2.筋肉から骨格へ|段階を追ったアプローチの大切さ
3.術後やケガをしたときのリハビリテーション
4.実際の症例から見るリハビリの効果
5.まとめ

 

リハビリテーションの目的とその大切さ

犬のリハビリテーションには、「ただ歩けるようにする」といった単純な目的だけではありません。
実際には、犬の体と心の健康をトータルで支えるために、いくつかの大切な目的があります。

 

関節の可動域を回復・維持する
動かさずにいると関節が硬くなってしまうことがあります。リハビリを通して関節の柔軟性を保つことで、スムーズな動きができるようになります。

 

筋力の強化と筋肉バランスの調整
動かないことで筋肉が落ちてしまうと左右の筋力バランスが崩れ、身体に負担がかかります。バランスを整えながら筋力を戻していくことが大切です。

 

正しい歩き方の回復
姿勢や歩き方に癖があると、知らないうちに関節や筋肉に負担がかかってしまいます。正しい動きを取り戻すことで、痛みの予防にもつながります。

 

二次的なトラブルの予防
関節炎や筋肉の萎縮など、動かさないことで起きやすい別の病気を未然に防ぐという意味でも、リハビリは大きな役割を担っています。
特に高齢の犬や手術を受けたばかりの犬は、しばらく安静が必要になることも多いですが、動かさない状態が続くと、筋力が落ちたり、回復が遅れてしまったりすることがあります。
さらに、それが原因で新たな症状が出てしまうことも少なくありません。
そのため、愛犬の体調や状態に合わせたリハビリプログラムを行うことが重要です。

 

 

筋肉から骨格へ|段階を追ったアプローチの大切さ

犬のリハビリテーションでは、いきなり骨格のゆがみを正そうとするのではなく、「筋肉 → 筋膜 → 骨格」という順番で少しずつ身体を整えていくのが基本の考え方です。
このように段階を踏んだアプローチをすることで、愛犬に無理なく、そしてより効果的に身体のバランスを整えることができます。

 

当院では、日本の国家資格である「愛玩動物看護師」に加え、米国テネシー大学公認リハビリ資格「CCRP(Certified Canine Rehabilitation Practitioner)」およびスウェーデン式ドッグマッサージの資格を持つ池田頌子が、マッサージ・運動療法・鍼治療などを組み合わせ、愛犬の状態に合わせたリハビリテーションを行っています。

 

👉スタッフ紹介ページはこちら
(ページ内の「動物理学療法士(CCRP)」をご覧ください)

 

<第1段階|筋肉のコリをほぐす>

運動不足や姿勢の癖、または痛みによる緊張などが原因で犬の筋肉にもコリが生じることがあります。
まずはマッサージやレーザー治療、温熱療法などで筋肉のこわばりをほぐし、血行を良くします。こうしたケアによってリラックス効果が生まれ、次の段階の施術がよりスムーズに行える状態になります。

 

<第2段階|筋膜へアプローチする>

筋膜とは、筋肉を包んでいるとても薄い膜のことです。この筋膜が癒着してしまうと、筋肉の動きが制限され、痛みや違和感の原因になることがあります。
そこで、「筋膜リリース」と呼ばれる手技を用いて筋膜の滑りを良くし、筋肉本来の柔軟性や関節の可動域を回復させていきます。

 

<第3段階|骨格の正しい位置へと導く>

筋肉や筋膜が整ってくると、それに伴って関節や骨格も本来あるべき位置に戻りやすくなります。
この段階では、バランスボールを使ったトレーニングや、正しい姿勢をサポートする補助具の活用などを通して、骨格の安定を目指します。
犬が自分の力でバランスを取りながら、正しい姿勢を保てるようになることがゴールです。

 

 

術後やケガをしたときのリハビリテーション

手術のあとやケガをした犬にとってのリハビリテーションは単なる運動ではなく、回復をしっかりとサポートするための、科学的なプロセスとして行われるものです。

 

まず大切なのは、「またお散歩ができるようになること」や「ひとりで立てるようになること」など、具体的で達成しやすい目標を立てることです。
リハビリは、おおまかに次のような段階を踏んで進められます。

 

<初期|痛みを和らげ、安静を守る>

まず安静を保つことが大切です。無理に動かすのではなく、愛犬が安心して休める環境を整えることから始めます。

 

<中期|関節の動きを広げ、軽い運動を導入>

少しずつ体を動かしていくステップへ進みます。具体的には、関節の可動域を広げるためのストレッチや、筋肉にやさしく刺激を与える軽い運動などを取り入れていきます。

 

<後期|歩く練習やバランストレーニング>

歩行の練習バランス感覚を養うトレーニングを行い、普段の生活に戻れるように日常的な動作の回復を目指していきます。

 

リハビリを進めるうえでは、「どの部位を優先してケアするか」などを、犬の状態をしっかり観察しながらその都度調整することが大切です。

 

回復までにかかる時間には個体差がありますが、多くの場合は数週間から数ヶ月ほどかけて、少しずつ段階的に進めていくことになります。焦らずゆっくりと、愛犬のペースに合わせて見守ってあげましょう。

 

 

実際の症例から見るリハビリの効果

当院では、トイプードルをはじめとする小型犬において、「肩関節がゆるみ、食事の際に前足が横に広がってしまい、頭をうまく支えられない」といった症状が多く見られます。

 

このようなケースでは、専門的なリハビリテーションのアプローチがとても効果的です。
愛犬の身体の状態に合わせて、次のような段階的なリハビリを行います。

 

肩関節周囲の筋肉強化エクササイズ
姿勢を支えるために必要な筋肉を、集中的に鍛えるトレーニングです。
特に首や肩まわりの安定性に関わる筋肉を強化することで、頭をしっかり支えられるようにしていきます。

 

肩甲骨と上腕骨の位置関係を整える施術
肩関節が正しい位置におさまるよう、骨同士のバランスを調整します。
これにより、前足が横に広がってしまうような姿勢の崩れを防ぎます。

 

筋膜リリースで柔軟性を回復
筋肉を包む膜(筋膜)が癒着していると、動きにくさやこわばりが生じます。
鍼(はり)などを用いて筋膜の癒着を和らげ、筋肉や関節のスムーズな動きを取り戻します。

 

補助具の活用
リハビリ中や日常生活では、ハーネスやポジショニング用のクッションを活用して、姿勢を無理なく保てるようにサポートします。

 

実際に、こうしたリハビリを数週間〜数ヶ月かけて継続することで、犬がしっかりと頭を支えられるようになり、落ち着いて食事ができるようになるという成果が見られています。

 

 

まとめ

犬のリハビリテーションは「体を動かすこと」だけが目的ではなく、再発の予防や毎日の暮らしの質(QOL)を高めることを目指した、大切な医療的ケアです。

 

そして、筋肉 → 筋膜 → 骨格という順序にそった段階的なアプローチによって、愛犬に無理のないかたちで、確実に回復へと導くことができます。

 

当院では、手術やケガの後もできるだけ元気に動ける日が続くように、一頭一頭の症状や状態に合わせて、科学的根拠に基づいたリハビリプログラムを実施しています。

 

次回の第2部では、加齢による筋力の低下や、寝たきりになってしまった犬のためのリハビリテーションについて、より詳しくご紹介いたします。
高齢期のケアについて気になっている飼い主様は、ぜひご覧ください。

 

第2部の記事はこちら

 

世田谷区の成城通り病院と祖師谷通り病院の2拠点で、身近な街の動物病院として診療を行っている池田動物病院グループ

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Doctor's File 池田宏司院長

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