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犬と猫の膿皮症とは?|症状の見分け方とケア方法まとめ

  • 皮膚科

「膿皮症(のうひしょう)」は、犬や猫によく見られる皮膚トラブルの一つです。

膿皮症は、早期に適切な対応をすることで改善が期待できますが、放置してしまうと症状が悪化して治療に時間がかかる場合もあるため、早めの対応がとても大切です。

 

今回は、膿皮症について、症状の特徴や見分け方をはじめ、治療方法や日常のケア方法までを詳しく解説します。

■目次
1.膿皮症とは?
2.膿皮症の主な症状と早期発見のポイント
3.膿皮症の原因と種類
4.治療方法
5.治療を放置した場合のリスク
6.よくある質問
7.まとめ

 

 

膿皮症とは?

膿皮症とは、皮膚に細菌が感染して炎症を引き起こす病気です。

主な原因は皮膚の表面にいる常在菌で、通常は皮膚のバリア機能によってその増殖が抑えられています。しかし、皮膚に傷ができたり免疫力が低下したりすると、この菌が急に増殖し、膿皮症を発症することがあります。

 

<犬と猫の発症率と特徴の違い>

この病気は特に犬に多く見られ、短毛種や皮膚が敏感な犬種、例えばフレンチブルドッグや柴犬などは発症リスクが高い傾向があります。

一方、猫で膿皮症が見られることは稀ですが、何らかの皮膚トラブルや免疫力の低下をきっかけに発症することがあります。また、猫の皮膚は非常にデリケートなため、一度発症すると症状が進行しやすい点に注意が必要です。

 

膿皮症には、皮膚の表面にだけ炎症が起きる「表在性」と、皮膚の深い部分にまで炎症が広がる「深在性」の2つのタイプがあります。

どちらの場合も、早めに異変に気づいて適切な治療を行うことが、症状の悪化を防ぐ鍵となります。

 

 

 

膿皮症の主な症状と早期発見のポイント

膿皮症の症状は、初期の段階では軽く見えることが多いものの、放置すると徐々に進行し、皮膚の状態が明らかに悪化していきます。

愛犬や愛猫の皮膚を日常的に観察し、早い段階で異変に気づくことが、重症化を防ぐための大切なポイントです。

 

<初期症状>

・小さな赤い斑点が皮膚に現れる

・皮膚が少し湿ったように見える

・痒みを伴う場合もあり、頻繁に掻く仕草を見せる

 

<中期症状>

・丸い形をした脱毛部分ができる

・皮膚が厚くなり、フケが目立つようになる

・膿が溜まった小さな膿疱(のうほう)が見られる

 

<重症化した場合>

・膿疱が破れ、皮膚がただれて出血する

・強い臭いを発するようになる

・痛みを伴うため、触れられるのを嫌がる

 

<部位別の症状とその特徴>

膿皮症の症状は以下のように、体の部位によって現れ方が異なります。

 

顔の周り赤みや湿疹が出やすく、痒みのために頻繁に掻く、顔をこすりつけるといった行動が増えることがあります。

お腹や内もも:薄い皮膚が脱毛し、湿った状態が続くことが特徴です。

脇や足の裏炎症や膿が目立ち、痛みを伴うことがあります。そのため、歩くのを嫌がったり、足を引きずったりする仕草を見せることもあります。

 

<要注意のサイン>

以下のようなサインが見られた場合、膿皮症が進行している可能性があるため、早めに獣医師に相談しましょう。

 

強い痒みで頻繁に掻いたり舐めたり、噛む行動が増える

フケが増え、皮膚の色が変わる

触れると痛がり、時には攻撃的な反応を示す

食欲が落ち、元気がなくなる

 

 

 

膿皮症の原因と種類

膿皮症は細菌感染が直接の原因となる病気ですが、その背景にはさまざまな要因が関係しています。ここでは、感染の仕組みや誘発要因について詳しくご紹介します。

 

<感染の仕組み>

膿皮症は、皮膚の表面に存在する常在菌(主にブドウ球菌)が過剰に繁殖することで発症します。通常、この菌は皮膚のバリア機能によって抑えられていますが、傷ができたりバリア機能が低下したりすると、細菌が増殖して炎症を引き起こします。

 

また、膿皮症の発症には、「マラセチア」という酵母菌が間接的に関与する場合もあります。この菌は、湿気や皮脂の多い環境で増殖しやすく、皮膚に炎症を引き起こすことでバリア機能が低下し、結果として膿皮症へと発展することがあります。

 

<膿皮症を誘発する要因>

アレルギー環境アレルギーや食物アレルギーが皮膚に炎症を起こし、それが細菌感染を誘発することがあります。

 

免疫力低下加齢やストレスが原因で免疫力が低下すると、細菌感染を引き起こしやすくなります。

 

外傷引っ掻き傷や虫刺されが感染の入り口となり、膿皮症の原因になることがあります。

 

 

 

治療方法

膿皮症は、適切な治療を行えば改善が見込める皮膚疾患ですが、治療を怠ると症状が悪化し、愛犬や愛猫に大きな苦痛を与えてしまう可能性があります。

ここでは代表的な治療法についてご紹介します。

 

<投薬治療>

抗生物質:細菌感染を抑えるために使用され、症状の重さに応じて内服薬や注射が選ばれます。

抗炎症薬:痒みや炎症を軽減する目的で処方されることがあります。

 

<シャンプー療法>

皮膚の清潔を保ちながら細菌の増殖を抑えるために、殺菌成分を含むシャンプーを使用します。特に皮膚が脂っぽい場合や湿疹が目立つ場合に効果的です。

ただし、シャンプーの頻度や使用方法を間違えると、逆に皮膚に負担をかけることもあるため、必ず獣医師の指導に従いましょう

 

<生活環境の改善>

湿気が多い環境は細菌やマラセチアの繁殖を助長するため、通気性の良い環境を整えることが重要です。

また、アレルギーが膿皮症の原因となっている場合には、食事の内容や住環境の見直しが必要になります。これらを改善することで、症状の再発を防ぎやすくなります。

 

 

 

治療を放置した場合のリスク

膿皮症を治療せずに放置すると、次のようなリスクが高まります

 

感染が皮膚の深層に進行し、治療期間が長引く

症状が悪化して激しい痛みを伴うようになる

 

定期的な通院は、治療の進行状況を確認し、適切なケアを継続するために欠かせません。愛犬や愛猫の健康を守るためにも、獣医師と連携しながら治療を進めることが大切です。

 

 

 

よくある質問

Q.膿皮症は人にうつりますか?

A.膿皮症自体は犬や猫特有の病気であり、人にうつることはありません

ただし、感染の原因となる細菌が免疫力の弱い方に影響を及ぼす可能性があります。そのため、治療中の愛犬や愛猫に触れた後は、忘れずに手をしっかり洗うようにしましょう。

 

Q.完治までどのくらいかかりますか?

A.治療期間は、症状の重さや治療の進行状況によって異なります。

軽い場合は数日から数週間で改善が見られることが多いですが、深在性の膿皮症のように症状が進行している場合、1〜2か月ほどの長期的な治療が必要になることもあります。

 

Q.マラセチアと膿皮症の違いは?

A.マラセチアは皮膚の常在菌(酵母菌)の一種で、湿気の多い環境で増殖し、皮膚炎を引き起こすことがあります。一方、膿皮症は細菌感染による炎症が原因です。

ただし、両方が同時に発症するケースも少なくありません。そのため、獣医師による正確な診断と適切な治療が重要です。

 

 

 

まとめ

膿皮症は、早期発見と適切な治療を行うことで改善が見込まれる皮膚疾患です。日頃から愛犬や愛猫の皮膚の状態をこまめにチェックし、少しでも異変を感じた場合は、速やかに動物病院を受診しましょう。

 

また、治療に加えて、通院や生活環境の見直しを行うことが再発防止につながります。愛犬や愛猫の健康を守るためにも、獣医師と連携しながら適切なケアを続けていくことが大切です。

 

 

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