犬と猫の皮膚トラブルは冬に増える?|専門医が教える保湿ケアと薬浴の新常識
- 皮膚科
愛犬や愛猫の皮膚が赤くなったり、毛が抜けたり、痒みのせいで掻きむしっている姿を見て、不安を感じたことはありませんか?
皮膚トラブルは犬や猫によく見られる問題の一つですが、放っておくと症状が悪化し、深刻な健康問題につながることもあります。
特に冬は乾燥や寒さが原因となり、皮膚トラブルが増えやすい季節ですので、いつも以上に愛犬や愛猫の皮膚の状態を気にかけてあげることが大切です。
今回では、犬や猫の皮膚トラブルに関する正しい知識とケアの方法を、専門医の視点からわかりやすく解説します。
■目次
1.犬と猫の皮膚トラブルとは?
2.冬に関連する主な症状
3.原因
4.薬浴について
5.家庭でできるケア方法
6.来院や相談の大切さ
7.よくある質問
8.まとめ
犬と猫の皮膚トラブルとは?
皮膚トラブルとは、赤み、痒み、湿疹、脱毛、フケといった症状を含む、皮膚の健康が損なわれた状態のことを指します。
これらの症状は、皮膚が正常に機能していないサインであり、放置すると悪化して全身の健康に影響を及ぼすこともあります。
犬や猫の皮膚は人間の皮膚に比べて非常に薄く、バリア機能が弱いため、外部からの刺激に敏感で傷つきやすいのが特徴です。
さらに、体が毛で覆われているため、皮膚に異常があっても見つけにくい場合があります。
また、犬や猫の皮脂腺や汗腺の分布は人間とは異なり、それが原因で特有の皮膚トラブルが発生しやすい傾向があります。
<皮膚トラブルが多い犬種・猫種>
以下の犬種や猫種は、皮膚トラブルを起こしやすい傾向があります。
・犬種:フレンチブルドッグ、柴犬、ゴールデンレトリバー、シーズー など
・猫種:スコティッシュフォールド、アビシニアン、ヒマラヤン、メインクーン など
冬に関連する主な症状
冬は、乾燥した空気や暖房の影響で皮膚の状態が悪化しやすい季節です。この時期に以下のような症状が見られる場合は、早めに適切なケアを行うことが大切です。
・フケが増える
・皮膚がカサカサする
・赤みや湿疹が出る
・痒みが強くなる
これらの症状を放置すると、皮膚のバリア機能がさらに低下し、症状が悪化する恐れがあります。冬の間は、特に保湿や環境管理を意識したケアを心がけましょう。
原因
犬や猫の皮膚トラブルの原因には、さまざまな要因が関わっています。主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
・アレルギー:環境アレルギーや食物アレルギーが皮膚に炎症を引き起こすことがあります。
・細菌感染:皮膚のバリア機能が低下することで細菌が増殖し、炎症を引き起こします。
・寄生虫:ノミやダニなどの寄生虫が皮膚に付着し、痒みや炎症を引き起こすことがあります。
・乾燥:特に冬は、乾燥した空気や暖房の影響で皮膚が乾燥しやすくなります。
・栄養不足:必要な栄養素が不足すると、皮膚の健康が損なわれやすくなります。
・ホルモン疾患:甲状腺機能低下症やクッシング症候群などのホルモン異常が、皮膚トラブルの原因となることがあります。
皮膚トラブルは原因によって治療法が異なるため、早めに原因を特定し、適切な対応をすることが大切です。異変に気づいたら、速やかに動物病院を受診しましょう。
薬浴について
池田動物病院では、皮膚トラブルを抱える愛犬や愛猫のために「薬浴」という治療方法を取り入れています。薬浴とは、特別な薬用シャンプーや温浴療法を活用して皮膚や被毛を丁寧にケアする方法です。
薬浴は、皮膚トラブルを改善するだけでなく、清潔を保つことで新たな問題を予防する効果があります。特に薬用成分には、炎症を抑えたり、菌の繁殖を防いだりする働きが期待できるため、皮膚トラブルがある場合に非常に有効です。
さらに、薬浴は飲み薬に頼らない治療法として注目されており、薬に過度に依存することなく皮膚状態の改善が期待できます。また、既に内服治療を行っている場合でも、薬浴を併用することで飲み薬の量を減らす効果が期待できることもあります。
また、入浴にはリラックス効果もあり、犬や猫のストレスを軽減することにもつながります。
池田動物病院では、動物それぞれの状態に合わせた最適な薬浴方法を行っています。
・毛の長い犬種や猫種:洗浄後の乾燥を徹底し、被毛が蒸れないように配慮します。
・子犬や子猫、高齢の場合:体温が下がらないように短時間で済ませる工夫をしています。
<市販の薬浴と動物病院での薬浴の違い>
市販の薬用シャンプーは軽度の皮膚トラブルや日常的なケアには適していますが、特定の皮膚トラブルや症状には十分な改善が見られないことがあります。
池田動物病院ではマイクロバブルと炭酸泉湯という2つの特殊な設備を活用しています。これらは温かいお湯に微小な泡を発生させることで、毛穴の汚れを優しく取り除く効果があります。
また、炭酸泉湯では、皮膚を通して二酸化炭素が吸収されることで血管が拡張し、血行が促進されます。この作用により、皮膚の深部まで血流が行き渡り、血行不良が原因の皮膚トラブルの改善が期待できます。
さらに、炭酸泉温浴は、目に見える変化が現れることもあります。
透明だった水が、温浴後にはグレーに変色するほど、毛穴の奥に詰まった汚れや皮脂をしっかり除去します。
この優れた洗浄力と血行促進作用により、他の治療では改善が難しかった皮膚トラブルの緩和が期待できます。
動物病院で行う薬浴の大きな特徴は、市販品では届きにくい皮膚の奥深くまでケアができる点です。皮膚トラブルの改善だけでなく、健康な皮膚状態を維持するためのサポートとしても役立ちます。
家庭でできるケア方法
池田動物病院では、犬や猫の皮膚トラブルを予防するために「保湿」を重視したケアをおすすめしています。乾燥は皮膚トラブルを悪化させる大きな原因の一つですので、日々のケアでしっかりと潤いを与えることが大切です。
シャンプーで皮膚を清潔に保つことも重要ですが、それだけでは乾燥を完全に防ぐのが難しい場合もあります。そこで、皮膚に直接潤いを与えられる保湿ローションの使用をおすすめしています。
保湿ローションは、乾燥による痒みや炎症を和らげる効果が期待でき、皮膚を健やかに保つのに役立ちます。
また、毎日使えるように、成分が優しいものを選ぶことがポイントです。家庭でのケアに保湿を取り入れることで、皮膚トラブルの予防や改善につながります。
<家庭での保湿方法>
犬や猫の皮膚を健康に保つために、家庭でも簡単に取り入れられる保湿ケアをご紹介します。
・入浴後やブラッシング後に保湿ローションを使用する
シャンプーやブラッシングの後は、皮膚が乾燥しやすくなります。このタイミングで専用の保湿ローションを塗布することで、潤いをしっかり与えられます。
・乾燥が気になる部分を重点的にケアする
特に乾燥しやすいお腹や足の裏、耳の周りなどを重点的にケアしましょう。痒みや赤みがある場合は、無理をせずにまずご相談ください。
・部屋の湿度を40~60%に保つために加湿器を活用する
冬場やエアコンを使う時期は、部屋が乾燥しがちです。加湿器を活用して快適な湿度を保つことで、皮膚の乾燥予防に役立ちます。
来院や相談の大切さ
冬は、乾燥や寒さによって犬や猫の皮膚トラブルが悪化しやすい季節です。皮膚が赤くなる、フケが増える、毛が抜けるといった症状をそのままにしておくと、症状が進行し、痛みを伴ったり感染症を引き起こしたりする可能性があります。
ただし、早めに治療を開始すれば、症状を早く改善できるだけでなく、治療期間や負担を軽減できることが多いです。
また、皮膚トラブルを予防するためには定期健診が欠かせません。定期的に動物病院で健康状態をチェックすることで、トラブルが起こる前に適切な予防策を取ることが可能です。
元気な状態を確認することも大切な健康管理の一環ですので、ぜひお気軽に当院にご相談ください。
よくある質問
Q.皮膚病の治療が薬漬けでかわいそう…薬を使わずに治せませんか?
A.必ずしも薬物治療だけが選択肢ではありません。「薬浴」という方法もあり、薬用シャンプーを使用することで皮膚に優しく治療を進めることができます。薬浴は治療効果が期待できるため、獣医師に相談して、愛犬や愛猫に合った治療法を選びましょう。
Q.薬を使わずに皮膚病を完治させることはできますか?
A.完治が難しい場合もありますが、適切な治療とケアを行うことで症状をコントロールし、愛犬や愛猫が快適な生活を送ることは可能です。
また、生活環境の改善や食事内容の見直しも、治療の重要な一環として効果的です。
Q.「アトピー」と「アレルギー」は同じですか?
A.アトピーとアレルギーは似ている部分もありますが、異なる疾患です。
アトピーは遺伝的な要因が強い慢性的な皮膚疾患で、一方のアレルギーは特定の物質(アレルゲン)に反応して症状が現れるものです。
これらは診断や治療の方針が異なるため、症状に心当たりがある場合は、獣医師に相談して正確な診断を受けましょう。
まとめ
犬や猫の皮膚トラブルを予防し、健康を保つためには、日々の適切なケアと早めの相談が大切です。池田動物病院では、専門的な薬浴や保湿ケアをはじめ、さまざまな方法で愛犬や愛猫の健康をサポートしています。
気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。愛犬や愛猫が快適に過ごせるように、しっかりお手伝いさせていただきます。
世田谷区上祖師谷の成城通り病院「池田動物病院」