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マダニが媒介するSFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは

  • 内科 循環器科 腫瘍科

近年、マダニ媒介感染症のひとつである「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」についての報道を目にする機会が増えています。地球温暖化の影響でマダニの活動期間が長引き、生息範囲も広がっていることから、感染者は年々増加傾向にあります。
SFTSは、犬や猫が感染するだけでなく、人にも感染して命に関わるリスクがある病気です。実際に、犬や猫から飼い主様へ感染した事例も報告されています。

 

今回は、SFTSの基礎知識、発生状況、症状や診断方法、そして予防のポイントについて解説します。

■目次
1.SFTSとは
2.SFTSの発生状況
3.感染した場合の症状と経過
4.SFTSの診断と治療
5.感染予防のためにできること
6.愛犬・愛猫に症状が見られた場合の対応
7.よくある質問(Q&A)
8.まとめ

 

SFTSとは

SFTSは、SFTSウイルスを保有するマダニに咬まれることで感染する人獣共通感染症です。マダニは草むらや山林など身近な場所に潜んでおり、特に外に出る猫や野良猫での感染リスクが高いとされています。

〈感染経路〉

マダニに咬まれる
感染した動物や人の血液・唾液・排泄物に触れる
→ ペットが感染した場合、飼い主様へうつる可能性もあるため注意が必要です。

 

症状は咬まれてから6〜14日程度で現れることが多く、発熱や倦怠感など風邪に似ているため見過ごされやすいのが特徴です。しかし、重症化すると命に関わる危険があるため、予防と早期発見が非常に重要です。

 

 

SFTSの発生状況

日本では2013年に、海外渡航歴のないSFTS患者が初めて報告されて以降、2025年時点で1,000例以上が確認されています。致死率は20〜30%と高く、重症感染症として警戒されています。

 

動物については届け出義務がないため正確な統計は不明ですが、2017年に犬と猫で初めて発症が確認されて以来、報告例は増加しています。2024年には196頭と過去最多を記録し、その中にはペットから飼い主様や獣医療従事者へ感染した例も含まれています。

 

当初は西日本を中心に発生していましたが、2025年には関東でも感染例が報告されました。5月には茨城県で犬と猫、7月には神奈川県で人の感染が確認され、地理的な拡大が懸念されています。

 

 

感染した場合の症状と経過

人や犬・猫が感染すると、以下のような症状が見られます。

 

〈人の場合〉

感染後6〜14日の潜伏期を経て、急な発熱・倦怠感・食欲不振といった風邪に似た症状から始まります。
その後、嘔吐・下痢・腹痛などの消化器症状が加わり、数日間にわたって強い全身症状が続きます。

 

重症化すると、リンパ節の腫れや出血症状、痙攣、意識障害などを引き起こし、命を落としてしまうケースもあります。

 

〈犬の場合〉

犬は感染しても無症状または軽症で経過することが多いとされています。発症した場合には、発熱や消化器症状が見られ、数日で回復することもあります。
しかし一部では肺炎や出血傾向、神経症状に進行することも報告されており、死亡率が20%以上とされるデータもあります。

 

〈猫の場合〉

猫は犬に比べてはるかに重症化しやすいのが特徴です。感染後は発熱や食欲不振、嘔吐、下痢などの症状が出て、数日のうちに急速に悪化することがあります。
進行すると黄疸、出血症状、神経症状(ふらつき、痙攣、意識低下)が現れ、致死率は60%以上と非常に高い水準です。

 

 

SFTSの診断と治療

SFTSは症状や血液検査だけでは診断が難しく、確定診断にはPCR検査が必要です。通常は血液やぬぐい液を採取し、外部検査機関に依頼します。

 

ただし、確定診断がついても有効な抗ウイルス薬やワクチンは存在しません。そのため、点滴による水分・電解質の補正、解熱剤、栄養補給などの対症療法で症状を緩和し、体力の回復を待つしかないのが現状です。

 

つまり、愛犬や愛猫をSFTSの脅威から守るためには、発症する前に予防することが何よりも重要なのです。

 

 

感染予防のためにできること

SFTSには有効な治療薬やワクチンが存在しないため、「マダニに咬まれないこと」こそが最大の予防策です。日常生活の中でできる対策を、いくつかご紹介します。

 

1. 愛犬・愛猫にマダニを寄生させない
もっとも基本的で確実なSFTS対策です。まずは、年間を通してマダニの予防薬を継続的に投与することが大切です。
マダニの寄生や咬まれること自体を完全に防ぐことは難しいですが、予防薬を投与している犬や猫にマダニが吸血すると、マダニはその後死滅します

 

この仕組みによって、マダニの個体数を減らし、次の感染の連鎖を断つことができます。つまり、予防薬の投与は「愛犬・愛猫を守る」だけでなく、「周囲の感染を防ぐ」という意味でも非常に重要な対策といえます。

 

さらに、猫は完全室内飼育を徹底し、犬は散歩中に草むらや山林へ入らないように注意しましょう。

 

2. 家の中に持ち込まない
帰宅後は愛犬や愛猫の全身をチェックし、マダニがついていないか確認しましょう。

 

◆ 飼い主様自身の注意
お散歩で草むらがある所に行く際や、自然が多い場所に出かける際は長袖・長ズボンの着用や虫除けスプレーを活用し、帰宅後はすぐに着替えを行いましょう。

 

3. 定期的な体のチェック
どんなに気をつけていても、感染リスクをゼロに抑えることは難しいです。そのため、定期的に愛犬や愛猫の体をチェックし、マダニがついていないかどうか確認する習慣をつけるようにしましょう。

 

 

愛犬・愛猫に症状が見られた場合の対応

万が一愛犬や愛猫にSFTSが疑われる症状がみられた場合は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
ただし、いきなり病院を受診してしまうと、何も知らずに接触した病院のスタッフや他の動物にうつしてしまうリスクがあるため、必ず事前に電話で連絡を入れてください。

 

また、感染動物の血液や体液にはウイルスが含まれるため、素手で触れず、手袋やペットシーツを使用するなど、接触を避ける工夫が必要です。

 

 

よくある質問(Q&A)

Q1: 完全室内飼いならSFTSの心配はない?
A:いいえ。マダニはベランダや衣類に付着して室内に侵入する可能性があるため、室内飼育でも感染するリスクがあります。

 

Q2: マダニに咬まれた痕が見当たらないのに発症することはある?
A:はい。感染動物や人との接触でも感染するため、必ずしも咬傷痕があるわけではありません。

 

Q3:マダニを愛犬・愛猫の体に見つけたときの正しい対処法は?
A:無理に取ろうとするとマダニの口が皮膚に残ってしまい、炎症や感染症を引き起こす恐れがあります。そのため、マダニを見つけたら必ず動物病院で除去してもらいましょう

 

 

まとめ

SFTSは人にも動物にも感染する非常に危険な感染症で、日本国内での報告例は年々増加しています。特に猫では重症化しやすく、命を落とすケースも少なくないため、マダニが多く潜む草むらなどに近づかないよう心がけ、定期的にマダニの予防薬を投与するようにしましょう。
さらに、日頃から愛犬・愛猫の全身をチェックして、もし異変を感じたら、自己判断せず速やかに動物病院へ相談してください。

 

愛犬・愛猫を守ることは、飼い主様ご自身とご家族の健康を守ることにもつながります。

 

〈参考〉
https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/12668-sfts-ra-0801.html
https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/article/sfts/020/20250523144135.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html
https://jsv.umin.jp/journal/v69-2pdf/virus69-2_169-176.pdf
https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/11817-516r08.html

 

 

世田谷区の成城通り病院と祖師谷通り病院の2拠点で、身近な街の動物病院として診療を行っている池田動物病院グループ

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