犬・猫の誤飲誤食|すぐ受診すべきサインと正しい対処法
- 総合診療
「少し目を離したすきに、何かを飲み込んでしまったかもしれない」そんな場面は、犬や猫と暮らしていると決して珍しくありません。
誤飲誤食は、どのご家庭でも起こりうる身近な事故です。特に犬や猫は体が小さいため、ほんの少しの量でも体調に大きく影響することがあります。
飲み込んだものによっては、胃や腸を傷つけたり、腸につまったり、中毒症状を起こしたりすることもあります。
さらに注意したいのは、見た目には元気そうに見えても、体の中では異常が進んでいる場合があることです。
そのため「少し様子を見よう」「家で吐かせたほうがいいかも」と自己判断するのは危険です。対応が遅れたり、誤った処置をしてしまったりすると、かえって重症化につながることもあります。
この記事では、誤飲誤食の特徴から、受診の目安、正しい対応、予防までを、飼い主様向けにわかりやすく紹介します。

■目次
1.犬と猫で違う|誤飲誤食が起こりやすい理由
2.実際に多い誤飲誤食の例
3.誤飲誤食で起こる症状|すぐ受診が必要なサイン
4.応急処置の考え方|やっていいこと・ダメなこと
5.食べた物によっては「腎臓のトラブル」につながることも
6.病院では何をする?
7.今日からできる誤飲誤食の予防策
8.まとめ
犬と猫で違う|誤飲誤食が起こりやすい理由
同じ「飲み込む事故」であっても、犬と猫では起こりやすい場面や飲み込みやすいものに少し違いがあります。それぞれの傾向を知っておくと、ご家庭での予防にもつなげやすくなります。

〈犬に多いパターン〉
犬は、気になるものをまず口に入れて確かめる傾向があり、勢いよく食べてしまったり、よく噛まずに飲み込んでしまったりすることがあります。
家庭内では、食べ物そのものだけでなく、ラップやアルミホイルなどの包装材ごと飲み込んでしまうことがあります。
また、散歩中の拾い食いがきっかけになることも少なくありません。
〈猫に多いパターン〉
一方で猫は、食べ物を狙うというより、遊びの延長で誤飲してしまうことが多く見られます。特に注意したいのは、紐、リボン、毛糸、ビニールなどの細長いものです。
こうした紐状の異物は、1回に飲み込む量が少なくても、胃の中で絡まったり、腸の中で引っ張られるような状態になったりして、通過障害や消化管の傷につながることがあります。そのため、飲み込んだ量が少なく見えても重症化することがあり、猫では特に注意したい誤食のひとつです。
実際に多い誤飲誤食の例

誤飲誤食といっても、飲み込んでしまうものはさまざまです。
その中でも、動物病院に相談が多いものにはある程度の傾向があります。ご家庭の中に危険がないか見直すきっかけとして、代表的な例を知っておきましょう。
〈食べ物に関するもの〉
・チキンの骨
・焼き魚の骨
・脂っこい料理
・人のお菓子
・ハンバーグやコロッケなど、玉ねぎが入った料理
・チョコレート
骨は、尖った部分が口の中や食道、胃腸を傷つけたり、途中で詰まったりする原因になります。
また、脂っこい料理は胃腸に強い負担をかけ、嘔吐や下痢を起こしやすくなります。体質によっては、膵臓に負担がかかることもあります。
さらに、チョコレートや玉ねぎなどは、犬や猫に中毒を起こすおそれがあります。
玉ねぎは、ハンバーグやコロッケ、スープ、煮物などに入っていることもあるため「玉ねぎそのものを食べていないから大丈夫」とは限りません。
〈食べ物以外の中毒につながるもの〉
・人の薬
・殺虫剤
・除草剤
・洗剤
・乾燥剤
・電池
・観葉植物
飲み込んだものによっては、胃腸だけでなく、神経、肝臓、腎臓など全身に影響が及ぶこともあるため、「食べたかもしれない」と思った時点で早めに動物病院へ相談することが大切です。
〈食べ物以外の異物〉
・おもちゃの部品
・ビニール
・包装フィルム
・マスク
・ボール
・輪ゴム
・紐
・リボン
・毛糸
・靴下
・タオルの切れ端
食べ物ではないものを飲み込んでしまうケースも少なくありません。
また、来客時や引っ越し、模様替えのタイミングは、家の中の物の配置が変わりやすく、犬や猫が普段触れない物に興味を示しやすくなります。
「もう慣れているから大丈夫」と思っているときほど、思わぬ事故につながることがあるため注意が必要です。
誤飲誤食で起こる症状|すぐ受診が必要なサイン
誤飲誤食では「症状が出てから受診する」のではなく、飲み込んだものによっては「症状がなくても早めの受診が必要」になることがあります。
食べてから30分以内に処置を始められると、命を守れるケースがあります。迷ったときは、お電話やペット手帳から早めにご相談ください。
そのうえで、判断に迷ったときの目安として、まずは“急ぐべきサイン”を知っておきましょう。
・嘔吐・下痢が続く
・よだれが止まらない
・元気がない、ぐったりしている、呼吸が荒い
・何度も吐こうとするのに吐けない(空えずき)
・食欲が落ちた
・お腹を触ると嫌がる/痛そう
・ふらつき、震え、けいれんなどの神経症状がある
・便が出ない、腹部が張ってきた感じがする
「今は元気そうだから大丈夫かな」と自己判断せず、早めに相談することが大切です。
応急処置の考え方|やっていいこと・ダメなこと
誤飲誤食の場面では「何かしてあげたい」と気持ちが焦るほど、かえって危険な対応をしてしまうことがあります。だからこそ、まずは落ち着いて、状況を整理しながら対応することが大切です。
〈やっていいこと〉
① 何を食べた(飲み込んだ)かを確認する
可能であれば、現物や同じもの、袋や箱などを受診の際に持参すると、成分や量の確認に役立ちます。
② いつ頃か/どれくらいかをメモする
正確でなくても構いません。「○時頃に気づいた」「少しかもしれない」「1枚分減っている」などの情報でも十分参考になります。
③ 迷ったら電話で相談する
判断に迷ったときは「少し様子を見よう」とするより、まず動物病院に電話で相談するのが安全です。受診が必要かどうかや、急いだほうがよいかどうかを確認することができます。
〈やってはいけないこと〉
自己判断で無理に吐かせることはおすすめできません。食べたものによっては、吐かせてはいけないものも多くあります。
内容によっては、吐かせることで食道を傷つけたり、吐いたものが気道に入ってしまったり(誤嚥)する危険があります。
また、紐状のものが口から出ている場合も、引っ張ってはいけません。
腸が引っ張られて傷つくおそれがあるため、無理に触らず、そのまま受診してください。
食べた物によっては「腎臓のトラブル」につながることも
誤飲誤食というと「胃や腸に詰まる」「吐く・下痢をする」といった症状を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、飲み込んだものによっては、胃腸だけでなく腎臓に負担がかかることもあります。
たとえば、中毒を起こす物質の中には、体の中で処理される過程で腎臓にダメージを与え、急性腎障害につながるものがあります。これは、短い時間で腎臓の働きが低下してしまう状態です。
さらに、障害の程度や経過によっては、腎臓への負担がその後も残り、慢性的な腎機能の低下につながる可能性が否定できない場合もあります。
飲み込んだものがはっきり分からない場合でも、腎臓に影響する可能性があるかどうかを動物病院で判断できることがあります。迷ったときは、早めに相談することが安心につながります。
病院では何をする?
病院では「飲み込んだ物の種類」「時間」「症状」「体の状態」といった情報をもとに、必要な検査や処置を判断していきます。
〈診断方法〉
まずは問診で、食べた物の内容や量、気づいた時間、現在の様子などを確認します。
そのうえで、必要に応じてレントゲンやエコー(超音波検査)を行い、異物の位置や詰まりの有無を調べます。
また、血液検査によって、中毒の影響や脱水の程度、腎臓などへの負担を確認することもあります。
〈治療方法〉
治療の方法は、飲み込んだものや経過した時間によって大きく変わります。
状況によっては、吐かせる処置で回収できることもありますし、異物の種類や位置によっては内視鏡で取り出せる場合もあります。
嘔吐処置には、過酸化水素水を飲ませる方法、止血剤を静脈注射する方法、嘔吐中枢を刺激する点眼を行う方法などがあります。ただし、どの方法でも必ず吐かせられるわけではなく、成功率はおよそ60〜70%とされています。
当院では、これらの方法の中でも、現在もっとも体への負担が少ないと考えられる点眼による嘔吐処置を採用しています。
一方で、すでに腸まで進んで詰まりが疑われる場合や、紐状の異物で腸が引っ張られている可能性がある場合には、手術が必要になることもあります。
「このくらいなら大丈夫かも」と迷っているうちに、治療が難しくなることもあるため、早めの相談が結果的に体への負担を減らすことにつながります。
今日からできる誤飲誤食の予防策
予防の基本は「犬や猫が届く場所に物を置かないこと」と、「拾ったりいたずらしたりしやすい環境をできるだけ作らないこと」です。
ただし、大切なのは「気をつけよう」と思うだけで終わらせず、毎日の暮らしの中で続けやすい形にしておくことです。
🔶 家の中では「置きっぱなし」を減らす
まずご家庭では、床やローテーブルの上に小物を置かない習慣をつけると、事故の予防につながります。
包装ごみやラップ、竹串、輪ゴム、乾燥剤、薬、電池などは、ちょっとした油断で誤飲につながりやすいため、置き場所や片付け場所をあらかじめ決めておくと安心です。
🔶 紐状のものを出しっぱなしにしない
猫がいるご家庭では、紐、リボン、毛糸、ビニールのような細長く動くものに特に注意が必要です。
「遊ぶときだけ出す」「席を立つ前に必ず片づける」といった習慣を意識すると事故を防ぎやすくなります。
また、おもちゃの一部がちぎれていないか、古くなってほつれていないかを定期的に確認することも大切です。
見慣れた物でも、傷んでくると誤飲のリスクが高まることがあります。
🔶 散歩中の拾い食いにも注意する
犬では、散歩中の拾い食い対策も大切です。
地面のにおいを嗅ぐこと自体は自然な行動ですが、拾い食いしやすい子では、リードをやや短めに持って管理したり、落ちている物が多い場所を避けたりする工夫が役立ちます。
🔶 年末年始やイベント時期は特に気をつける
年末年始や来客時、旅行前後、バレンタインなどのイベント時期は、普段よりも食べ物や包装材が出やすく、犬や猫も興奮しやすくなります。
こうした時期は、当院でも実際に誤飲誤食のご相談が増える傾向があるため「いつも以上に起こりやすい時期」と意識して、家の中での物の置き方やゴミ箱の管理をいつもより丁寧にしておくことが大切です。
〈「今まで大丈夫」でも油断しないで〉
誤飲誤食は「今まで大丈夫だったから」と思っているときほど起こりやすいものです。
慣れている子でも絶対に事故を起こさないわけではないからこそ、日頃から事故が起こりにくい環境を整えておくことが大切です。
完璧を目指すというよりも、まずは置きっぱなしを減らすこと、危ない物の定位置を決めること、イベント時期はいつも以上に注意することから始めてみましょう。
まとめ
犬や猫の誤飲誤食は、どのご家庭でも起こりうる身近な事故です。多くは「少し目を離したすき」に起こり、自己判断で様子を見たり、無理な処置をしたりすることで重症化につながることがあります。
特に、嘔吐やぐったりしている、吐こうとしても吐けない、ふらつきやけいれんがあるといった場合は早めの受診が必要です。
迷ったときは、食べたもの、時間、量の情報を整理したうえで、まずはお電話でご相談ください。早めの行動が、治療の選択肢を広げ、結果的に愛犬・愛猫の負担を減らすことにつながります。
また、当院では診療時間外も交代で獣医師が在室しております。緊急の際も、まずはお電話でご相談ください。
世田谷区の成城通り病院と祖師谷通り病院の2拠点で、身近な街の動物病院として診療を行っている「池田動物病院グループ」












