これって病気のサイン?犬の「なんとなく変」に気づくために
- 総合診療
犬は本来、不調を隠そうとする動物です。
そのため、はっきりとした症状が出る前の「なんとなく元気がない」「いつもと違う気がする」といった小さな変化に気づいてあげることが、病気の早期発見につながります。
こうした違和感は、毎日そばにいる飼い主様にしか分からない、大切な“気づき”です。
日頃から愛犬の様子をよく観察し「いつもの元気な状態」を知っておくことが、変化への早期対応につながります。
そのためには、食欲・排泄・歩き方・呼吸・皮膚・行動など、毎日の様子を「なんとなく」見るのではなく、普段の様子と比べてどこが違うのかを意識しておくことが大切です。
今回は、愛犬の「なんとなく変」に気づくために、どんなところを観察しておくとよいのかについてわかりやすく解説します。

■目次
1.食欲・水分摂取量の変化
2.おしっこ・うんちの変化
3.歩き方・姿勢がなんだかおかしい
4.呼吸の変化・咳・息づかい
5.皮膚・被毛の異常
6.行動の変化・性格が変わった
7.迷ったら「相談」でOK!病院は“変化”を共有する場所
8.まとめ
食欲・水分摂取量の変化
まず注目していただきたいのが、「食べ方」と「水を飲む量」の変化です。
次のような変化は、体のどこかに病気が隠れているサインかもしれません。

糖尿病やクッシング症候群では「よく食べてよく飲むのに痩せてくる」といった変化が出ることがあります。一方で、胃腸炎や歯周病などでは「食べたい気持ちはあるのに、痛みや気持ち悪さから食べられない」といった様子になることもあります。
<考えられる病気や原因>
・ホルモン異常(糖尿病、クッシング症候群 など)
・腎臓病
・消化器疾患
・子宮蓄膿症
・歯周病 など
食欲はその日の気温や運動量でも多少変動がありますが、「いつもと明らかに違う状態が2〜3日以上続く」場合や、「急にまったく食べなくなった」場合は、早めの受診をおすすめします。
おしっこ・うんちの変化
次にチェックしていただきたいのが、おしっこやうんちです。排泄の変化は、泌尿器や消化器の不調だけでなく、腎臓病やホルモン異常などのサインとして見られることもあります。
🔸おしっこの変化
おしっこでは、次のような変化に注意しましょう。

<考えられる病気や原因>
・膀胱炎、尿道炎、尿結石などの泌尿器疾患
・腎臓病
・ホルモン異常
・前立腺のトラブル など
とくに、オス犬で「何度も排尿姿勢をとるのにおしっこが少ししか出ない」「出したそうにしているのにおしっこが出ない」といった様子が見られる場合は、尿道がふさがり、おしっこが出にくくなっている可能性があります。状況によっては緊急対応が必要になることもあるため、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
🔸うんちの変化
うんちでは、次のような変化に注意しましょう。

<考えられる病気や原因>
・腸炎、大腸炎
・消化不良
・食事内容の変化
・前立腺のトラブル など
うんちについては、一時的な食べ過ぎやフードの変更でゆるくなることもあります。
しかし、下痢や血便が続く、嘔吐を伴う、ぐったりしているといった場合には早めに受診しましょう。
気になる排泄物は、写真や動画を撮り、可能であれば少量を持参していただくと診断の助けになります。
歩き方・姿勢がなんだかおかしい

これらの歩き方や姿勢の変化も、見逃したくないサインのひとつです。
<考えられる病気や原因>
・関節や筋肉のトラブル(関節炎、十字靭帯断裂、膝蓋骨脱臼など)
・椎間板ヘルニアなどの脊椎疾患
・神経疾患
・痛みを伴うさまざまな疾患 など
若い頃のケガやもともとの関節の形の問題が、年齢とともに症状として表れてくることもあります。
特に小型犬では膝のトラブル、大型犬では股関節や肘のトラブルが多くみられます。
高齢犬の場合、「年だから仕方ない」と様子を見てしまいがちですが、痛みがある状態を放置すると、動くこと自体がつらくなり、筋力低下・体重増加・別の関節への負担など、悪循環に陥ることもあります。
散歩の距離が急に短くなった、階段やソファの昇り降りを嫌がる、撫でたときに特定の場所で怒る・嫌がるといった変化が続く場合には、一度動物病院でチェックしてもらうことをおすすめします。
呼吸の変化・咳・息づかい
呼吸の変化も、ときに命に関わる重要なサインです。

このような症状がみられる場合は、呼吸器や心臓の病気が隠れている可能性があります。
<考えられる病気や原因>
・心臓疾患(僧帽弁閉鎖不全症 など)
・気管支炎や気管虚脱
・肺炎・肺水腫 など
「興奮したときだけ」「運動の後だけ」といった場合でも、徐々に悪化してくることがあります。
また、季節や気温、時間帯によって症状の出方が変わることもあり「そのうち落ち着くかな」と様子を見てしまいがちですが、その陰に重い病気が隠れていることもあります。
たとえば、舌や歯ぐきが紫がかった色になる(チアノーゼ)、倒れる・失神する、安静にしていても呼吸が苦しそう、といった様子がある場合は、すぐに受診が必要です。
さらに、咳の様子(乾いた咳・こみ上げるような咳など)を動画で撮っておいていただくと、診察の際に症状を正確にお伝えいただきやすくなり、診断の助けにもなります。
皮膚・被毛の異常
皮膚や被毛の状態は、体の内側の不調が表れやすい部分でもあります。

これらの変化は、皮膚そのものの病気だけでなく、ホルモン異常などが背景にあることもあります。
<考えられる病気や原因>
・アレルギー性皮膚炎
・アトピー性皮膚炎
・細菌・真菌などの感染症
・甲状腺や副腎のホルモン異常 など
アトピー性皮膚炎についてはこちら
アレルギー性皮膚炎についてはこちら
膿皮症についてはこちら
かゆみが強い場合、犬は我慢できずに舐めたり噛んだりして、皮膚を傷つけてしまうことがあります。その結果、さらに炎症や感染が広がり、悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。
そのため、日頃からブラッシングやスキンシップの際に、皮膚の色や熱っぽさ、匂いの変化などにも目を向けてみてください。
ただし、犬は全身を毛で覆われているため、初期の段階では見逃されてしまうケースも少なくありません。実際に当院でも、トリミング中に皮膚の異常が見つかり、早めの診察やケアにつながった子もいます。定期的なトリミングやシャンプーを「きれいにするためだけ」と考えず、健康チェックの機会として活用していただくのもおすすめです。
行動の変化・性格が変わった
一見すると「性格の問題かな?」と思えるような変化も、実は体の不調や脳の病気が隠れていることがあります。

こうした変化は、老化にともなう認知機能の低下のほか、痛みや不安、脳の病気などが背景にあることもあります。
また、目が見えづらい、耳が聞こえづらいといった変化によって、不安が強くなったり、周囲の刺激に敏感になったりすることもあります。
<考えられる病気や原因>
・認知機能不全(いわゆる“犬の認知症”)
・脳炎・脳腫瘍などの脳疾患
・関節や内臓の慢性的な痛み
・不安障害・強いストレス など
たとえば、痛みを抱えていると、触られたくない部分に手が近づいたときだけ怒る、といった行動が出ることがあります。
また、夜間の徘徊や夜鳴きは、認知機能の低下の初期サインとしてみられることもあります。
いちばんの手がかりになるのは、「この子のいつもの様子をよく知っているご家族の違和感」です。
「なんとなくいつもと違う」「前と比べて変わってきた気がする」と感じたら、その感覚を大事にしていただき、遠慮なくご相談ください。
迷ったら「相談」でOK!病院は“変化”を共有する場所
「気になるところはあるけれど、受診するほどなのか分からない」「こんな相談をしてもいいのかな」と悩まれる飼い主様も多いですが、動物病院は“ハッキリした病気のときだけ行く場所”ではありません。
むしろ、まだ疾病名がつく前の「なんとなく変」や飼い主様が説明しづらい違和感を一緒に整理していく場所でもあります。
体調不良や病気の初期段階であれば、早く治療を開始できることで、痛みやつらさを軽減できる可能性が高まります。
また、検査の結果「大きな問題はなさそうですね」と確認できることも、飼い主様にとっては大きな安心につながります。
診察の前には、
・気になった様子をメモしておく
・写真や動画をスマホで撮っておく
・いつからどのくらい続いているのかを簡単にまとめておく
といった準備をしていただくと、診察がスムーズになり、より正確な判断につながりやすくなります。
さらに、当院ではリハビリおよびトリミングを専門に行う施設も新設しました。
トリミングやリハビリといった日常ケアの場は、病院と飼い主様をつなぐ大切な接点でもあります。「ついでに最近気になっていることを相談する」「プロの目線で体の状態を見てもらう」といった形で、気軽にご利用いただければと思います。
当院のリハビリテーション&マッサージ dog’s reについてはこちら
当院のトリミングサロンBiancaについてはこちら
まとめ
飼い主様が感じる「なんとなく変」は、愛犬からの大切なサインかもしれません。その違和感を大切にして、ぜひ私たちにお伝えください。
「病院=病気になってから行く場所」ではなく「ちょっとした変化でも気軽に相談できる場所」であり、いち早くご相談いただくことで早期発見・早期治療につながりやすくなります。
どんな小さなことでも構いません。気になることがあれば、いつでもご相談ください。
◾️関連記事
犬の咳が止まらない!症状からわかる原因と対処法
愛犬・愛猫の腸活|腸内環境を整えて健康トラブルを防ぐ
犬と猫の皮膚トラブルは冬に増える?|専門医が教える保湿ケアと薬浴の新常識
世田谷区の成城通り病院と祖師谷通り病院の2拠点で、身近な街の動物病院として診療を行っている「池田動物病院グループ」












