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愛犬・愛猫の腸活|腸内環境を整えて健康トラブルを防ぐ

  • 内科 循環器科 腫瘍科

愛犬や愛猫が毎日元気に過ごすためには、「腸内環境を整えること(腸活)」がとても大切です。腸の働きがスムーズだと消化吸収の効率が上がり、免疫力が向上し、さまざまな健康トラブルの予防につながります。

 

しかし、腸内環境が乱れると、下痢や便秘だけでなく、皮膚トラブルやアレルギーの悪化など、さまざまな不調を引き起こすこともあります。

 

そこで今回は、犬や猫にとっての腸活の必要性と、具体的な方法について解説します。

■目次
1.腸内環境が乱れると起こるリスク
2.食事バランスと腸内環境の関係
3.フードの変更は慎重に!
4.腸活による6つの改善効果
5.効果的な腸活の始め方
6.よくある質問(Q&A)
7.まとめ

 

 

腸内環境が乱れると起こるリスク

腸内環境が乱れると、便秘や下痢、食欲不振といった消化器の不調が現れるだけでなく、皮膚トラブルやアレルギー、免疫力の低下、さらには精神的な不安定さにつながることがあります。

 

特に腸は「第二の脳」とも呼ばれ、全身の健康を左右する重要な器官です。腸内環境が悪化すると、体に必要な栄養がしっかり吸収されず、老廃物の排出もスムーズに行われなくなります。その結果、健康トラブルのリスクが高まるのです。

 

また、高齢の犬や猫は腸の機能が低下しやすいため、若いうちから腸活を意識し、腸内環境を整えることが大切です。

 

さらに最近では、口腔内の細菌が腸内に影響を与えることもわかってきました。犬の腸内から歯周病に関連する細菌が検出される割合は12%という報告があり、年齢とともにその割合は上昇するといわれています。

口腔内の環境が腸内にも影響を及ぼし、全身の健康リスクを高める可能性があるため、腸活とあわせて歯のケアにも意識を向けていきましょう。

 

 

食事バランスと腸内環境の関係

腸内環境を整えるためには、毎日の食事バランスがとても重要です。栄養が偏った食事は腸内細菌のバランスを崩し、消化不良や便の異常、免疫力の低下を引き起こす原因になります。

 

<市販フードの注意点>

一般的に市販されているフードには、極端に品質の悪い原材料が使われていることはほとんどありません。

ただし、愛犬や愛猫の食いつきを良くするために香料や調味料などの添加物が加えられている場合や、特定の栄養素に偏っている可能性もあります。

 

そのため、どのフードを選ぶかは、成分表示や原材料のバランスをしっかり確認することが大切です。

 

■市販フードを選ぶ際のポイント

総合栄養食かどうかを確認する

・原材料の品質(肉や魚の含有量)をチェックする

添加物の少ないものを選ぶ

 

さらに、必要に応じて腸内環境をサポートするサプリメントや食材を取り入れることも検討しましょう。

 

■広告やパッケージの印象に惑わされず、冷静に内容を確認しましょう

パッケージや広告には、魅力的な言葉やイメージがたくさん使われていますが、それが必ずしも実際の内容を正確に表しているとは限りません。

中には、実際の成分や効果以上に良く見せようとする表示もありますので、冷静に内容を見極めることが大切です。

 

そのためには、信頼できるフードの栄養組成と比較してみるのも一つの方法です。たとえば、たんぱく質や脂質、炭水化物の割合、さらにビタミンやミネラルのバランスなどを参考にすると、そのフードが愛犬や愛猫に合っているかどうかを判断しやすくなります。

 

また、犬種や年齢、体格、体質などによって、必要とする栄養素の量は変わってきます。ある栄養素を多めに必要とする場合もあれば、控えめにした方がよい場合もあります。

それぞれの個性を理解し、愛犬や愛猫に合ったフードを選ぶことが大切です。

 

さらに、栄養素によっては「バランスよく摂ること」がとても重要です。成分表示を見る際は、含有量だけでなくそのバランスにも目を向けてみてください。

 

<手作りフードの注意点>

手作りフードは食材を自由に選べるため安心感がある一方で、栄養バランスが崩れやすいというリスクもあります。

 

■手作りフードで不足しやすい栄養素

タンパク質(筋肉や免疫機能の維持に必要)

ビタミン・ミネラル(消化・代謝・免疫機能を支える)

脂肪酸(皮膚や被毛の健康維持に重要)

繊維質(善玉菌のエサとなり、便の形状を整える)

 

手作りフードを取り入れる場合は、獣医師やペット栄養管理士と相談しながら、適切な栄養バランスを考慮したレシピを選ぶことが大切です。

 

 

フードの変更は慎重に!

愛犬・愛猫が現在のフードで健康状態に問題がない場合は、安易にフードを変更する必要はありません。特に新しいフードへの切り替えは、消化器トラブル(下痢・嘔吐)を引き起こす可能性があるため、慎重に行いましょう。

 

■フードの変更を行う場合のポイント

少しずつ新しいフードを混ぜながら、時間をかけて切り替える

・愛犬・愛猫の体調を観察し、異変があればすぐに獣医師に相談する

 

 

腸活による6つの改善効果

腸内環境を整えることで、愛犬・愛猫の健康がさまざまな面で向上します。

 

1.便秘・下痢の改善

腸内の善玉菌を増やすことで腸内環境が整い、便通が正常化します。

 

2.皮膚トラブルの改善

腸内環境が乱れると有害物質が体内に蓄積され、皮膚炎やかゆみの原因になることもあります。腸内のバランスを整えることで、皮膚の健康維持にもつながります。

 

皮膚トラブルについてはこちらから

 

3.精神の安定

腸と脳は「腸脳相関」と呼ばれる関係でつながっています。腸内環境が良いとストレス耐性が向上し、不安や興奮が軽減されることが期待できます。

 

4.免疫力の向上

腸には多くの免疫細胞が存在しており、腸内細菌のバランスが免疫機能に影響を与えます。腸活を行うことで、感染症や病気に対する防御力を高めます

 

5.アレルギー症状の緩和

腸内環境が整うことで免疫の過剰反応が抑えられ、アレルギー症状の軽減につながる可能性があります。特に食物アレルギーや皮膚のかゆみに悩む犬や猫には、腸活が有効といわれています。

 

アレルギー皮膚炎についてはこちらから

 

6.体臭の改善

腸内で悪玉菌が増えると有害物質が発生し、便臭や体臭の原因になります。腸活によって悪玉菌の増殖を抑えることで、体臭や口臭の軽減にもつながります。

 

最近の研究では、口の中の歯周病菌が腸内に定着することで、健康への影響を及ぼす可能性があると指摘されています。口腔内の細菌バランスを整えることも、腸活の一環として考えると良いでしょう。

 

 

効果的な腸活の始め方

愛犬・愛猫の腸内環境を整えるためには、食事・サプリメント・生活習慣の3つのポイントを意識することが大切です。ここでは、腸活を始めるための具体的な方法を紹介します。

 

<食事バランスを見直す>

腸活の基本は、毎日の食事を見直すことから始まります。

市販のフードを選ぶ際には、「総合栄養食」であること、そして栄養バランスがしっかり整っているかを確認しましょう。さらに、愛犬や愛猫の体質や年齢に合ったものを選ぶことが大切です。

 

■フード選びのポイント

消化に優しく、腸内環境をサポートする成分が含まれているものを選ぶ(食物繊維・乳酸菌・オリゴ糖など)

原材料や成分を確認し、不要な添加物が少ないものを選ぶ

 

■腸活におすすめの食材

さつまいも・かぼちゃ(食物繊維が豊富で腸内の善玉菌のエサになり、善玉菌が増えることで腸内環境が整い、便通の改善にもつながる)

無糖ヨーグルト(※犬向けプロバイオティクスが善玉菌を増やす)

オリゴ糖・乳酸菌サプリメント(腸内細菌のバランスを整える)

※猫は乳糖をうまく消化できないため、ヨーグルトの摂取には注意が必要です。

 

新しい食材を取り入れる際は、少量ずつ試し、愛犬・愛猫の体調を確認しながら進めましょう。

 

<乳酸菌剤を使い分ける>

腸内環境を整えるために、必要なサプリメントや薬、食品を活用するのも効果的です。

 

最近では「ポストバイオティクス」と呼ばれる、乳酸菌などの善玉菌が生み出す有用な代謝産物(酢酸や酪酸など)を活用した製品も注目されています。

ポストバイオティクスは、生きた菌ではなく「菌がつくり出した良い働きだけ」を利用するもので、胃酸などに左右されにくく、腸に届いてすぐに作用するといった特徴があります。

池田動物病院では、プロバイオティクスやプロバイオティクスだけでなく、ポストバイオティクスを使用しており、腸内環境のサポートや免疫バランスの改善を目的とした腸活に力を入れています。

 

それぞれの特徴を理解し、愛犬・愛猫の体調や体質に合わせて選ぶことが大切です。サプリメントの選び方について不安がある場合は、いつでもご相談ください。

乳酸菌剤の種類と特徴をまとめた表。ポストバイオティクスは善玉菌が生み出す代謝物で酢酸やペプチドなどを含む。プロバイオティクスは乳酸菌やビフィズス菌など善玉菌そのものを補給する。プレバイオティクスはオリゴ糖や水溶性食物繊維など善玉菌のエサとなり腸内環境を整える。シンバイオティクスはプロバイオティクスとプレバイオティクスの両方を含む。

 

<口腔ケアを取り入れる>

腸内環境と密接な関係にある口腔内のケアも、健康を支える大切な習慣のひとつです。腸内から歯周病菌が検出されることもあり、全身疾患のリスクを高める要因になりうるといわれています。

毎日のデンタルケア、定期的な歯科健診などを通じて、口腔環境も整えていきましょう。

 

<生活習慣を整える>

食事だけでなく、生活習慣を整えることも腸内環境の改善につながります。

適度な運動を取り入れ、犬の場合は毎日の散歩や遊びを充実させること、猫の場合はキャットタワーやおもちゃを活用し、規則正しい生活リズムを維持することが大切です。

 

 

よくある質問(Q&A)

Q.ペットの栄養相談は可能ですか?

A. はい。池田動物病院には、ペット栄養管理士の資格を持った獣医師が在籍しており、愛犬・愛猫の食事相談にも対応しています。栄養バランスの見直しや、疾患に合わせた食事管理についてもお気軽にご相談ください。

 

Q.人間用のお肉を与えても大丈夫ですか?

A犬は肉食と思われがちですが、人間用のお肉だけでは栄養が偏るため、主食としては適していません。また、塩やソースなどの味付けがされたお肉は、犬や猫にとって塩分過多や消化器トラブルの原因になる可能性があるため避けた方が良いでしょう。

 

犬や猫には、総合栄養食として設計されたペット専用フードを適切に与えることが基本です。お肉を与えたい場合は、ペット向けに調理された無添加のものを選ぶか、茹でる・蒸すなどして味付けせずに少量を与えることをおすすめします。

 

 

まとめ

腸活は、単なる健康維持にとどまらず、免疫力の向上や生活の質(QOL)の向上にもつながる大切な習慣です。特に子犬や子猫の時期には、腸内環境を整え、適切な食事習慣を形成することが重要になります。

腸内環境を整えるうえでは、日々の食事や生活習慣に加えて、口腔ケアも見逃せません。お口の健康を保つことが、腸や全身の健康を支えることにもつながります。

 

しかし、腸活の方法は個体によって合う・合わないがあるため、一つの方法がすべての犬や猫に適しているとは限りません。 愛犬・愛猫の体調や性格に合わせて、無理のない範囲で続けていくことが大切です。

 

もし腸活について気になることや不安があれば、当院までお気軽にご相談ください。 愛犬や愛猫の健康を第一に考え、それぞれに合った安全で効果的な腸活プランをご提案いたします。

 

世田谷区上祖師谷の成城通り病院「池田動物病院」

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Doctor's File 池田宏司院長

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