【シリーズ②】見逃しがちな犬・猫の口の中のできもの|口腔内腫瘍の症状と治療法を獣医師が解説
- 内科 循環器科 腫瘍科
前回は犬や猫の皮膚にできる「できもの」についてご紹介しましたが、シリーズ第2回の今回は「口の中」に注目します。
実は、口腔内は皮膚とは異なる特徴を持ち、腫瘍が成長しやすい部位です。しかし、見た目では気づきにくく、気づいた時には進行しているケースも少なくありません。
だからこそ、日頃からお口の中のケアを意識し、少しの変化にも気づけるようにしておくことが大切です。
【過去のシリーズ記事はこちら】
・シリーズ①|犬・猫の皮膚にできものが!長寿化で増加するイボ・腫瘍の見分け方と適切な対処法

■目次
1.口腔内にできる主な腫瘍の種類
2.飼い主様が気づきやすい初期症状
3.池田動物病院での診断と治療
4.日常の予防とケア
5.よくある質問(Q&A)
6.まとめ
口腔内にできる主な腫瘍の種類
犬や猫の口腔内には、良性から悪性までさまざまな種類の腫瘍が発生します。
① 歯肉腫瘍(エプリス)
犬に多くみられる良性腫瘍で、歯茎がぽこっと盛り上がったように腫れるのが特徴です。腫れが大きくなると歯が隠れてしまい、口臭が強くなることがあります。これは歯石の付着や炎症が原因で起こる場合もあります。
② 扁平上皮癌
高齢での発生が多い悪性腫瘍で、猫の口腔内腫瘍の約70%を占めるともいわれています。
③ 線維肉腫
歯肉にできやすく、浸潤性(周囲への広がり)が強い悪性腫瘍です。若い年齢でも報告があるため、年齢にかかわらず注意が必要です。
④ メラノーマ(悪性黒色腫)
高齢の小型犬に多く、黒っぽい見た目をしているのが特徴です。進行や転移が早いため、注意が必要です。また、腫瘍による壊死や感染の影響で、独特の強い口臭がみられることもあります。
口腔内は血流が豊富で、腫瘍が成長しやすい環境です。そのため、良性か悪性かを見極める診断が非常に重要になります。
飼い主様が気づきやすい初期症状

以下のようなサインは、口の中に異常がある可能性を示しています。
◆ 食事の変化
口の中の痛みや違和感から、食べにくそうにしたり食欲が落ちたりします。
◆ 口の臭い
悪性腫瘍による壊死や感染が原因で腐敗臭が出ることがあります。
◆ よだれの増加
腫瘍の位置や大きさにより、よだれが垂れるようになります。
◆ 行動の変化
違和感から口をくちゃくちゃしたり、口を頻繁にかいたりすることもあります。
◆ 見た目の変化
サイズが大きくなると、頬など顔の一部が腫れて見えたり、目が押し出されてるように見えることもあります。
ただし、これらの症状は他の口腔疾患でも見られるため、確定診断には専門的な検査が不可欠です。
池田動物病院での診断と治療
当院では、口腔内のできものに対して以下のような診療を行っています。
◆ 精密な口腔内検査
全身麻酔下で詳細に観察し、病理検査(組織検査)を実施して確定診断を行います。
◆ 外科的切除
腫瘍の性質に応じて、適切な範囲での除去を行います。再発リスクを考慮し、周囲の組織ごと切除するケースもあります。
◆ 術後ケアと生活指導
食事の工夫や経過観察のスケジュールなど、飼い主様が安心して自宅でケアできるようサポートします。
口腔内は解剖学的に複雑な部位です。治療経験の豊富な獣医師による的確な判断と処置が、愛犬・愛猫のQOL(生活の質)を守るうえで大切です。
日常の予防とケア
口の中の腫瘍は、歯ぐきの炎症などがきっかけでできてしまうこともあります。悪性の物は予防が難しいですが、次のような心がけが早期発見につながります。
・毎日の口腔チェック(口臭・よだれ・食べ方などの変化)
・定期的な健康診断の活用(年に1〜2回が目安)
・気になる様子があればすぐに受診
「気のせいかな?」と感じる小さな違和感が、早期発見のきっかけになることもあります。
よくある質問(Q&A)
Q1:食事は普通にしていますが、口の中にできものがあります。大丈夫でしょうか?
A:初期段階では痛みや不快感が出にくいこともあります。見た目に異常がある場合は、症状が軽くても専門的な検査を受けることをおすすめします。
Q2:口腔内の手術は難しいですか?
A:腫瘍の位置や大きさにより難易度は異なりますが、当院では経験豊富な獣医師が対応いたします。
Q3:良性と悪性は見た目で判断できますか?
A:外見だけでは判断できません。確定診断には組織を採取しての病理検査が必要です。
Q4:手術後は普通に食事できますか?
A:術後すぐは流動食などやわらかい食事を与えることになりますが、段階的に通常食に戻すことができます。適切な術後ケアを行うことで回復をサポートすることができますので、心配や不安がある場合には遠慮なくご相談ください。
まとめ
前回のシリーズでご紹介した皮膚のできものとは異なり、口腔内は日頃見えにくく、異常の発見が遅れがちです。しかし、腫瘍の進行を抑えるためには早期発見・早期治療が非常に重要です。
当院では、口腔内のできものの診断・治療を専門的に行っております。見落としがちな口の中の異常も、詳細な検査で早期発見いたします。愛犬・愛猫の様子が「いつもと違うな」と感じたら、どうぞ早めにご相談ください。
次回のシリーズ最終回では、目や耳の周辺にできる腫瘍について詳しく解説していきます。どうぞお楽しみに。
世田谷区の成城通り病院と祖師谷通り病院の2拠点で、身近な街の動物病院として診療を行っている「池田動物病院グループ」












