猫の仙腸関節の異常とは?腰痛による症状の見分け方と治療法を世田谷区の獣医師が徹底解説
- 外科 整形外科
「最近、なんとなく元気がない…」「撫でようとすると嫌がる」「うんちやおしっこがいつものように出ない」「ごはんを残すようになった」こんな小さな変化に気づいたことはありませんか?
猫はとても我慢強く、痛みや不調を表に出しにくい動物です。とくに骨や関節に関する異常は見た目ではわかりにくく、飼い主様が気づくのが遅れてしまうことも多いのです。
そのなかでも、意外と知られていないのが「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」のトラブルです。当院でも近年、「どこが悪いのか分からないけれど、なんとなく様子がおかしい」といったご相談の中に、この仙腸関節の異常が疑われるケースが増えてきました。
たとえば「ジャンプしなくなった」「動きが鈍くなった」「触ると怒るようになった」などの変化は、腰まわりの関節に痛みや違和感があるサインかもしれません。
今回の記事では、猫の体の中心部にある仙腸関節の役割や、異常があるときに見られる症状、診断や治療の方法についてわかりやすく解説します。

■目次
1.最近増えている猫の仙腸関節とは?
2.家の中でも起こる?仙腸関節が痛くなる原因とは
3.仙腸関節に異常があるときの症状
4.考えられる主な原因
5.診断と治療の流れ
6.池田動物病院での取り組み
7.まとめ
最近増えている猫の仙腸関節とは?

仙腸関節は、骨盤の中心にある「仙骨」と、左右に広がる「腸骨(骨盤の羽のような部分)」をつないでいる関節です。
この部分は、歩いたりジャンプしたりする際の衝撃を吸収し、体のバランスを保つ大切な働きをしています。
人間でもこの関節が原因で慢性的な腰痛になることがありますが、猫も同じように、この部分に不調があると、動きや姿勢、排泄などに影響が出てきます。
私たち池田動物病院(成城通り院・祖師谷通り院)でも、仙腸関節に関連した不調が疑われるご相談が、ここ数年で増えてきました。
たとえば、後ろ足の動きが不自然になったり、高い場所に登らなくなったり、触られることを嫌がったりするなど、「どこかおかしいけれど、はっきりと説明できない」状態が続くのが特徴です。イメージとしては、犬の椎間板ヘルニアのように、神経的な違和感や運動の制限がある状態に近いと考えていただくとよいかもしれません。
家の中でも起こる?仙腸関節が痛くなる原因とは
仙腸関節の痛みは、「外で遊んでいる猫がケガをしたときに起こるもの」と思われがちですが、実は完全室内飼育の猫でもよく見られます。
以下のような日常的な動きが、仙腸関節に負担をかけてしまうことがあります。
・キャットタワーからの着地に失敗した
・床が滑って、ジャンプの後にうまく踏ん張れなかった
・追いかけっこをしているときに、急に方向転換した
・筋力が落ちたり、太ったことで関節に負担がかかってしまった
・加齢によって関節や筋肉が硬くなった
・腰椎(背骨)の変形や関節炎の影響で、周囲の関節に負担が及んでいる
「うちの子は外に出ないから安心」と思われるかもしれませんが、実際には室内で過ごす猫のほうが運動不足や肥満になりやすく、それが原因で関節に負担がかかってしまうこともあるのです。
仙腸関節に異常があるときの症状
仙腸関節に痛みがある猫は、以下のような行動の変化を見せることがあります。
・抱っこを嫌がる、腰やお尻を触ると怒る
・後ろ足の動きがぎこちなく、ふらついて見える
・階段や段差を上るのをためらう、途中でやめてしまう
・以前より高い場所に登らなくなる
・トイレでうまく踏ん張れず、排便の失敗が増える
・グルーミング(毛づくろい)の回数が減り、背中や腰の毛並みが悪くなる
・じっと寝ている時間が増え、遊ばなくなる
こうした変化は、高齢の猫では「年のせいかな?」と見過ごされがちです。しかし、実際には痛みや不快感が原因であることも多いため、早めに気づいてあげることが大切です。
考えられる主な原因
仙腸関節に痛みが出る原因は一つではなく、以下のようなさまざまな要因が関わっています。

・ジャンプの失敗や転倒などによる軽いケガ
・走ったり、急に方向転換したりすることで起こる関節のズレ
・年齢を重ねることで起こる筋力や関節の柔軟性の低下
・腰や神経の異常から広がる炎症や痛み
・体重増加による関節への負担
診断と治療の流れ
仙腸関節の異常は、見た目でわかりづらく、レントゲンや血液検査だけでは診断が難しいこともあります。そのため、診断には総合的な視点と猫の動きを丁寧に観察することが欠かせません。
〈主な診断方法〉
◆ 触診と視診
歩き方や立ち上がるときの動作を見たり、仙腸関節周辺を軽く触れて痛みの反応や筋肉の張りを確認します。
◆ 画像検査(レントゲン・CT・MRIなど)
骨の変形や明らかな外傷がある場合に活用します。
◆ 除外診断
内臓疾患や他の整形外科的な異常の可能性も踏まえ、ひとつずつ丁寧に除外していきます。
〈主な治療法〉
仙腸関節の治療は、猫の状態や年齢、性格、生活スタイルに応じて、以下のような治療を組み合わせて行います。
◆ 薬物療法
消炎鎮痛薬や筋弛緩薬などを使用し、痛みを和らげます。必要に応じてステロイドやサプリメントを併用することもあります。
また、近年ではシニア猫の加齢性変化による痛みに対して効果が期待できる、月に1回の注射タイプの治療も登場しています。
◆理学療法(リハビリ)
マッサージやストレッチ、軽い運動を通じて筋肉の緊張をほぐし、関節への負担を減らします。
◆生活環境の見直し
滑りにくい床材への変更や段差はなるべく少なくしてあげるなど、小さな工夫が猫の負担を大きく軽減します。
池田動物病院での取り組み
当院では、猫の仙腸関節の痛みに対して「整形外科」「総合診療科」両方の視点から診療を行っています。
成城通り病院・祖師谷通り病院のいずれでも、
・痛みの緩和
・運動機能の改善
・再発の予防
という3つの柱を大切にしながら、それぞれの猫に合わせた治療計画を立てています。必要に応じて鍼治療なども取り入れながら、できる限り快適な生活が送れるようサポートしています。
「最近の様子がなんだか気になるな……」という段階でも構いません。気になる変化があれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。私たちは、飼い主様と一緒に不安や心配を少しずつ解消していける診療を心がけています。
まとめ
猫は痛みがあっても、鳴いたりアピールしたりすることはほとんどありません。だからこそ、日常の中で感じる「いつもと違うかも?」という違和感が、早期発見の大きな手がかりになります。
仙腸関節の異常は、放っておくと痛みが慢性化し、歩くことすらつらくなることもあります。しかし、早めに対処できれば、元気な生活を取り戻せる可能性は十分にあります。
「撫でると嫌がる」「ジャンプしなくなった」「歩き方がおかしい」そんな変化を感じたら、猫からのSOSかもしれません。
当院では、こうした“わかりにくい不調”に丁寧に向き合い、猫と飼い主様の快適な暮らしをサポートしています。気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
世田谷区の成城通り病院と祖師谷通り病院の2拠点で、身近な街の動物病院として診療を行っている「池田動物病院グループ」












