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猫が食べているのに痩せるのはなぜ?高齢猫に多い甲状腺機能亢進症を解説

  • 内科 循環器科 腫瘍科

「最近、よく食べているのに少し痩せてきた気がする」
「前より食欲があるから、元気なのかな?」
「抱っこしたとき、なんとなく軽くなったような……」

 

シニア期の猫では、このような変化が見られることがあります。

 

食欲が落ちて痩せてくると体調不良を疑いやすい一方で、しっかり食べていると「元気だから大丈夫」と思ってしまうこともあるのではないでしょうか。

 

しかし、猫が「食べているのに痩せる」ときは、体の中で何らかの変化が起きている可能性があります。特に高齢の猫で知っておきたい病気の一つが、甲状腺機能亢進症です。

 

今回は、猫の甲状腺機能亢進症について、飼い主様が気づきやすい症状や、日常生活で確認したいポイント、検査・治療についてご紹介します。

 

 

■目次
1.猫の甲状腺機能亢進症とは?
2.一番気づきやすいサインは「食べているのに痩せる」
3.高齢猫では「爪切り+体重測定」を健康チェックの機会に
4.甲状腺機能亢進症は何歳くらいから注意する?
5.甲状腺機能亢進症はどうやって調べる?
6.甲状腺機能亢進症にはどのような治療がある?
7.まとめ

 

猫の甲状腺機能亢進症とは?

甲状腺は、首のあたりにある小さな器官です。ここから分泌される「甲状腺ホルモン」には、食べ物から得た栄養をエネルギーとして使うなど、体の代謝を調整する働きがあります。

 

甲状腺機能亢進症は、この甲状腺ホルモンが必要以上に分泌される病気です。

 

甲状腺ホルモンが増えると体の代謝が活発になりすぎるため、十分に食べていてもエネルギーの消費が増え、徐々に痩せていくことがあります。

 

また、甲状腺ホルモンは全身に作用するため、消化器や心臓、血圧などにも影響を及ぼすことがあります。そのため、症状の表れ方は猫によってさまざまです。

 

一番気づきやすいサインは「食べているのに痩せる」

前述したように、甲状腺機能亢進症では、食欲があるにもかかわらず体重が減ることがあります。

 

以前よりよく食べるようになる猫もいるため、体調不良に気づきにくいこともあります。

 

そのため「よく食べているのに、抱っこすると軽くなった」「背中の骨が以前より目立つようになった」といった変化には注意しましょう。

 

また、体重減少のほかにも、次のような症状が見られることがあります。

 

・食欲が以前より強くなる
・水を飲む量や尿の量が増える
・落ち着きがなくなる
・よく鳴くようになる
・イライラしたり、怒りっぽくなったりする
・毛づくろいが十分にできず、毛並みが乱れる
・嘔吐や下痢が増える
・心拍数が増える

 

「最近よく動くようになったから、まだまだ元気」と思っていた変化が、実は甲状腺ホルモンの影響だったということもあります。

 

反対に、すべての猫が活発になるわけではなく、元気や食欲が低下する猫もいます。

 

このように症状の表れ方には個体差があるため、一つの症状だけで判断するのではなく、以前と比べて体重や食欲、行動に変化がないかを見ることが大切です。

 

高齢猫では「爪切り+体重測定」を健康チェックの機会に

シニア期の猫では、爪の状態にも変化が表れることがあります。

 

年齢を重ねると、関節の痛みや動かしにくさなどから爪とぎの回数が減り、古い爪の層が残って、爪が太く厚くなることがあります。さらに爪が伸び続けると、巻いた爪が肉球に刺さってしまうこともあります。

 

ただし、爪が太くなること自体が、甲状腺機能亢進症の代表的な症状というわけではありません。

 

ここで大切なのは、動物病院での爪切りを、体重や体調の変化を確認する機会にすることです。

 

高齢になると、自宅での爪切りが難しくなる猫もいます。爪切りのために来院した際に体重も測っておくと、飼い主様が見た目では気づかなかった体重減少が分かることがあります。

 

たとえば、前回は4.5kgだった猫が、今回は4.1kgになっていれば、「よく食べているのに体重が減っている」という変化に気づくきっかけになります。そのような変化をきっかけに検査を行い、甲状腺の異常が見つかることもあります。

 

シニア期に入ったら、2か月に1回程度を目安に爪切りと体重測定を行うのも、体調の変化を見つける方法の一つです。

 

もちろん、ご自宅で定期的に体重を測れる場合は、その記録も役立ちます。大切なのは、そのときの体重だけを見るのではなく、以前と比べてどのくらい変化しているかを確認することです。

 

甲状腺機能亢進症は何歳くらいから注意する?

甲状腺機能亢進症は、主に中高齢の猫で見られる病気です。年齢を重ねるほど注意したい病気の一つですが、比較的若い猫で見つかることもあります。

 

ただし、高齢猫だけがかかる病気というわけではありません。比較的若い猫で見つかることもあります。

 

そのため、「まだ若いから甲状腺の病気ではない」「高齢だから痩せても仕方がない」と年齢だけで判断せず、愛猫に気になる変化があれば動物病院へ相談しましょう。

 

甲状腺機能亢進症はどうやって調べる?

甲状腺機能亢進症が疑われる場合は、まず体重や心拍数、全身の状態などを確認します。

 

そのうえで血液検査を行い、主に甲状腺ホルモンの一つである「T4(総サイロキシン)」の値を調べます。甲状腺機能亢進症ではT4が高くなることが多いものの、症状があっても一度の検査でははっきり判断できない場合があります。その際は、猫の症状や検査結果に応じて、再検査や追加の検査を行います。

 

また、高齢の猫では、甲状腺機能亢進症だけでなく、慢性腎臓病などほかの病気を抱えていることもあります。そのため、血液検査や尿検査で腎臓や肝臓などの状態もあわせて確認します。

 

さらに、甲状腺ホルモンが過剰になると心拍数が増えたり、血圧が高くなったりして、心臓に負担がかかることがあります。必要に応じて血圧測定や心臓の検査も行い、全身への影響を確認します。

 

甲状腺機能亢進症にはどのような治療がある?

甲状腺機能亢進症には、いくつかの治療方法があります。

 

主な治療として、甲状腺ホルモンが作られるのを抑える「抗甲状腺薬」を使用する方法や、ヨウ素を制限した療法食によって甲状腺ホルモンの産生を管理する方法があります。そのほか、猫の状態によっては、手術や放射性ヨウ素を用いた治療が検討されることもあります。

 

抗甲状腺薬による治療では、甲状腺ホルモンの値を適切な範囲に保つため、継続して投薬しながら定期的に検査を行います。

 

ただし、どの治療が適しているかは猫によって異なります。腎臓や心臓などにほかの病気がないか、薬を継続して飲めるか、ご家庭でどのような管理ができるかなどを確認しながら、その猫に合った治療方法を検討します。

 

また、治療を始めたあとは、甲状腺ホルモンの値だけでなく、体重や腎臓などの状態も定期的に確認することが大切です。検査結果や体調の変化を見ながら、必要に応じて薬の量や治療内容を調整していきます。

 

まとめ

猫の甲状腺機能亢進症では、「食べているのに痩せる」ことが病気に気づく重要なきっかけの一つです。

 

また、落ち着きがなくなる、よく鳴く、毛並みが乱れるなど、一見すると病気とは結びつきにくい変化が現れることもあります。

 

特にシニア期の猫では、少しずつ起こる変化を「年齢のせい」と見過ごしてしまうことがあります。ご家庭で体重を測ったり、爪切りなどで動物病院を訪れた際に体重を確認したりして、以前との違いを見ておきましょう。

 

当院では、体重や食欲、行動など、飼い主様が日常生活で気づいた変化を伺いながら、甲状腺だけでなく全身の状態を確認します。「食べているのに痩せてきた」「最近、様子が変わった気がする」と感じたら、お気軽にご相談ください。

 

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